【2022/9】第7回 碁石海岸で囲碁まつり
【連携の経過】
2013年、「関東大震災90年」を機に始まった首都防災ウィークは全国連携の輪を拡げました。
その最も重要な地域が、岩手県大船渡市でした。
2011年3月の東日本大震災で、大船渡の市街地は壊滅的被害を受けました。
2012年10月、私たちは大船渡市碁石地区の復興を支援していた「災害復興まちづくり支援機構」の中野明安さん(事務局長、現代表)と藤田千晴さん(中小企業診断士、現地常駐)を通じて、碁石地区復興まちづくり協議会(大和田東江会長)からの要望(復興イベント「碁石海岸で囲碁まつり」の開催)を伺いました。
これが首都防災と大船渡復興連携の始まりです。
以後、10年の間に、たくさんの方々のご努力により、数多くの取り組みがなされました。
2014年1月:棋聖戦第四局前夜祭(川越市)
故小川誠子七段のご紹介で、大船渡市出身の石鍋博子さんにお会いしました。
石鍋さんは大船渡市が被災地としてではなく、「囲碁のまち大船渡」を市民が誇りにできるようにしたいこと、JR大船渡線を「囲碁列車」にしたいことなどを熱を込めて話されました。
2014年2月:「碁石海岸で囲碁まつり実行委員会」設立
UIFA JAPON(国際女性建築家会議日本支部)の会長をしておられた松川淳子さんの事務所で、急遽、実行委員会を設立しました。
2014年3月:初めて大船渡を訪問しました
誰一人、お会いしたことがありません。大和田会長のお計らいで、仮設住宅の相談室に起居させていただきました。
「囲碁列車」を走らせようと三陸鉄道に相談したら、「木谷さん、振動で石が動いてしまうから無理ですよ」と言われました。それはそうです。
友人の柿島光晴さんが普及を進めている視覚障がい者用碁盤アイゴを思い出しました。盤面を触りながら打つ、すばらしい碁盤です。アイゴは、座席のテーブルにぴたりとはまりました。
2014年7月: 第一回碁石海岸で囲碁まつり
首都圏から80人が参加しました。
釜石から盛(大船渡市)までの三陸鉄道「囲碁列車」は大人気で、一度も車窓を視ない方がいたと聞きました。
碁石地区にバスで行くと、あちこちに「碁石」の看板があります。そのたびに、「ここにも『碁石』が」という歓声があがりました。
前夜祭会場のレストハウス前には多くの大漁旗を掲げた地元の方々の大歓迎を受け、感激しました。
2015年6月:第二回囲碁まつり
「囲碁のまち大船渡請願署名」に10,926筆
大船渡商工会議所の齊藤俊明会頭(現、大船渡市観光物産協会会長)や中林一樹氏(首都防災ウィーク実行委員会代表)、全ての地区公民館長に代表世話人になっていただき、「囲碁のまち大船渡による復興と振興請願署名」運動を行いました。2か月の間に何と10,926筆が集まり、市議会に提出しました。人口3万人余の大船渡市ですから、大変な数です。うち半数が外国を含む大船渡市外の署名でした。大船渡市議会は全員起立で請願を採択してくれました。
2016年6月:「囲碁神社」(第3回囲碁まつり)
石鍋さんが、「囲碁の聖地には囲碁神社が必要だ」と突拍子もないことを話し始めました。
そんなことはできっこないと思っていたら、碁石地区にある熊野神社に通称「囲碁神社」を名乗っていただけないだろうかという話になりました。地域に三体あった石の碁盤の一体が消失しており、村上征一さん(碁石地区協議会副会長)が「石の碁盤」を奉納すれば、やがて「囲碁神社」と呼ばれるようになるだろうと。
志田隆人宮司もご快諾くださいました。
6月10日、盛大に「囲碁神社『石の碁盤』奉納祭」が開催されました。碁盤の台座には、台湾出身の名棋士・林海峰名誉天元が揮毫された「囲碁神社」の文字が刻まれました。石の碁盤制作、奉納祭は全て、金昌治さんのお取り計らいです。
2017年5月:第四回囲碁まつりで
「全国・台湾盲学校囲碁大会」を開催
NHKおはよう日本、NHKワールドなどで放送されました。
大船渡市は、「碁石の日(5月14日)」を制定しました。
2017年9月:第5回首都防災ウィーク(両国)で大船渡サンマ1000尾炭火焼き・戸田市長特別講演
2018年2月:最高棋戦「棋聖戦」開催
念願のタイトル戦招致が実現しました。大歓迎の模様を小論冒頭の「フォーラム動画」でご覧ください
2019年5月:「本因坊戦」第一局開催
最も伝統のあるタイトル戦。
三鉄全線163㎞に「囲碁列車・音楽列車」が走りました。
▲盛駅前の本因坊戦歓迎集会
【未来に向かって】
2014年に初めて戸田市長にお会いした時、「一過性のイベントにはしないでいただきたい」と言われました。
以来、「持続的な復興と振興」を目指して、可能な限りの取り組みを行ってきました。
しかし現実には、引き続く過疎化・超高齢化の進行に加え、漁獲高の激減があり、「持続的振興」の実現は容易ではないです。大船渡市の苦悩もここにあると思います。
私たちは、引き続き大船渡の皆さまとの連携を拡げ、深め、次の課題に取り組み、持続的振興の仕組みをつくりたいと考えています。
- 囲碁ホテル・囲碁旅館:首都圏・全国の囲碁ファンに呼びかけ、不用の碁盤を大船渡に送っていただく。どこに泊まっても碁が打てる「囲碁のまち」に。
- 三大タイトル戦開催(残るは名人戦):コロナで一旦は挫折しましたが、がんばりたい。
- 囲碁神社をライブスポットに:海が見える高台にある囲碁神社を、全国のミュージシャンが集まるライブスポット(集客・収益施設)にして、地域経営の核にしたい。
- 常設囲碁列車:鉄道を単なる移動手段でなく、学習、交流、脳力アップ、認知症予防の空間とし、全国ローカル鉄道のモデルにする。
- 人工海底山脈:第11回首都防災ウィークのメインテーマの一つ。大震災からの迅速な復興と漁業振興・食料増産を実現したいと考えています。意見交換させていただければ幸いです。
- 「ヘキゴ」:未来に延びる屋外ギャラリー
・・・「囲碁のまち」が見える!
今、沿岸には長大な防潮堤がつくられ、海が見えません。殺風景な防潮堤に、毎年1枚ずつ囲碁の写真や絵を描き、未来に延び続ける屋外ギャラリーにする。大船渡に一歩入れば、「囲碁のまち」が見える! 大船渡の皆さまの思い出と歴史が刻まれ、観光名所になると思います。この10年、不思議なご縁をいただきました。
戸田市長と観光交流推進室、金支部長、大和田会長はじめ全ての皆さまに心から感謝し、厚く御礼申し上げます。
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