碁石・心の交流~被災者の心をつなぎ、持続的振興へ
令和3年5月15日 更新
囲碁のまち大船渡実行委員会代表 木谷正道
【目次】
はじめに
◎様々な分野のネットワーク
◎「碁石海岸で囲碁まつり(囲碁のまち大船渡)」
◎みらクルTV
1 新型コロナ禍の勃発と「幻の音楽神社祭(2020年3月)」
2 日本初のオンライン双方向TV「みらクルTV」開局 2020年4月
3 「第七回碁石海岸で囲碁まつり」(2020年9月開催予定)を断念 2020年6月
4 「碁石・心の交流事業」2020年10月
5 素晴らしいミュージシャンとの出会い
◆LOVE SONGERS(気仙沼のユニット)
◆大石亜矢子(シンガーソングライター、ピアノ弾き語り、全盲)
◆白井崇陽(ヴァイオリニスト、全盲)
◆心の唄バンド
6 「碁石・心の交流事業」の困難、その先に見えた希望
7 六回の交流事業の内容
第一回:2020年10月17日 現地とZoomで初開催
第二回:2020年11月22日 コロナの第二波により、急遽、現地開催を断念し全面的にオンライン開催。
第三回:2020年12月13日 高校生向けに、音響と映像配信技術者養成講座をオンラインで始めた。
第四回:2021年1月31日 今回も全面オンラインで開催。地元の高校生二人が初めて技術者養成講座に参加。
第五回:2021年2月13日 今回も全面オンラインで開催
第六回:2021年3月20日 音楽神社祭を断念し、全面オンラインで第六回を開催
8 囲碁神社の設立 2016年
9 音楽神社構想
10 ヘキゴ 屋外囲碁美術館~広大な防潮堤がキャンパス
11 「鎮魂と希望の竹明かり」 大船渡と東京が「竹」でつながる 2021年8月
【本編】
はじめに
◎様々な分野のネットワーク
1995年1月の阪神淡路大震災以来、四半世紀にわたり、防災、まちづくり、音楽、囲碁、障害福祉など様々な分野の方々が協力しあい、ネットワークを発展させてきました。
既に消滅した団体もあれば、「早稲田いのちのまちづくり(1996年)」や「都民とつくる東京都産業振興ビジョン(1999年)」のように、重要な役割を果たしたあと、別のネットワークとして引き継がれ、発展した団体もあります。
現在も活動を続け、交流、協力している主な団体と設立年を掲げます。
これらの団体は、「囲碁のまち大船渡による復興と振興」でも連携し、ご支援をいただいています。
幅広い分野、地域をつなぐネットワークは珍しく、他に例がないのではないかと思います。
◆2002年 NPO法人東京いのちのポータルサイト
◆2003年 ひらつか防災まちづくりの会
◆2004年 NPO法人暮らしと耐震協議会
◆2004年 ネット社会と子どもたち協議会
◆2004年 災害復興まちづくり支援機構
◆2006年 UIFA JAPON(国際女性建築家会議日本支部)
◆2008年 心の唄バンド
◆2010年 21世紀の朝鮮通信使実行委員会
◆2011年 碁石地区復興まちづくり協議会
◆2013年 首都防災ウィーク実行委員会
◆2014年 (一社)日本視覚障害者囲碁協会
◆2014年 碁石海岸で囲碁まつり実行委員会(囲碁のまち大船渡実行委員会)
◆2016年 全国盲学校医囲碁大会実行委員会
◆2017年 高次脳機能障がいと囲碁の会
◆2020年 日本棋院平塚支部
◆2020年 新型コロナ各界連絡会
◆2020年 みらクルTV
◆2020年 北九州地区Zoom囲碁まつりの会
◆2021年 心をつなぐ囲碁連絡会
このほか、(公財)日本棋院、(社福)日本点字図書館、(社福)進和学園、NPO法人東京高次脳機能障害協議会、(公社)全国市有物件災害共済会、(公財)東京都慰霊協会など各分野の団体と連携しています。
それぞれのグループはML(メール会議室)などオンラインで情報を共有しており、各グループの主なメンバー同士もまた情報を共有しています。
囲碁や音楽が心を楽しく和ませ、多彩な分野の個性的な方々をつなぐ役割を果たしています。
◎「碁石海岸で囲碁まつり(囲碁のまち大船渡)」
2014年から始まった大船渡復興支援イベント「碁石海岸で囲碁まつり」で輪が一段と大きく拡がりました。
今、ご覧いただいているサイトは大船渡復興支援のサイトで、「碁石・心の交流」もここでご紹介します。
毎年の「碁石海岸で囲碁まつり」も、順次掲載していきます。
「碁石海岸で囲碁まつり」がどんな雰囲気なのかを、第二回(2015年)の映像でご覧ください。
参加者は視覚障がい者用碁盤アイゴ(列車の振動でも碁石がずれない)で、新幹線から碁を楽しんでいます。
沿岸被災地は大消費地から遠く、新幹線に加えローカル線で移動しなければなりません。
復興事業で無料の有料道路ができたので、鉄道は車に押されていると聞きます。
でも、車は移動にしか使えませんし、運転はくたびれますが、
アイゴがあれば、列車は「移動手段」に加え、「楽しい碁会所・居場所・生涯学習・脳開発・認知症の予防と改善室」に変わります。
JRはじめ全国のローカル線に活用のご検討をお願いします。
様々なプロジェクトの中に囲碁があると、和やかで楽しい雰囲気が生じます。
ネット空間では時に厳しい議論や緊張が生じますが、囲碁が「和」の方向に働き、状況を緩和します。
囲碁をたしなまれない方、囲碁と関係のないプロジェクトも含め、
「人をつなぎ、心をつなぐ囲碁」の力が作用していると感じています。
ちなみに、中林一樹先生(防災)、浅野史郎先生(障害福祉)、柴田いづみ先生(まちづくり)、瀧澤一郎さん(防災)、石鍋博子さん(復興)、藤村望洋さん(俳句)、大石亜矢子さん(音楽)、原香織さん(みらクルTV)など、このネットワークの中心メンバーの半数は囲碁をたしなまれないか、入門したばかりの方々です。
私たちはコロナ以前から、あまり会議は開きませんでした。
囲碁のまち大船渡実行委員会は年に数回です。
たまに開くと、再会の楽しさがあふれました。
2018年9月22日の実行委員会の一コマです。
珍しく、小川誠子先生(日本棋院、追贈七段)が参加されました。
大船渡支援のきっかけをつくり、心の唄、鞆の浦、首都防災ウィークなど、大変多くの応援をいただきました。
翌2019年11月に急逝され、お会いするのはこれが最後でした。
心から感謝しています。
◎みらクルTV
2020年4月、「囲碁のまち大船渡」が母体となり開局しました。
コロナが猛威を奮う中、みらクルTVは私たちの活動全体を支えるメディアに成長しました。
「碁石・心の交流」事業も、現地の実況中継を含め、全て「みらクルTV特番」として放送されました。
みらクルTVの構成要素は次の三つです。
◆WEB みらクルTV公式サイト:番組表、出演者、報道記事、重要発表など。
http://miracletv.site/
◆Zoom みらクルTV総合チャンネル:オンライン双方向テレビ会議・放送スタジオ
https://us02web.zoom.us/j/3782787584 パス39
囲碁大会など囲碁専用チャンネルもあります。
◆YouTube 既配信番組:ネット上のアーカイブとして動画が保存されています。
https://www.youtube.com/channel/UCz1Ol2QWmGWcjyR-gJREW2w/vid
以下、やや詳しく、「碁石・心の交流」事業に至る経過と事業の内容、大船渡の持続的復興に果たす意味、今後の構想を書きます、
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1 新型コロナ禍の勃発と「幻の音楽神社祭(2020年3月)」
2020年は激動の幕開けとなりました。
1月、中国武漢で新型コロナ肺炎が発生し、世界に拡散しました。
2月、横浜港でのダイヤモンドプリンセス号で世論が沸騰し、
私たちは当面する全イベントの中止を余儀なくされました。
その中に3月に大船渡市碁石地区で開催予定の「音楽神社祭」がありました。
2 日本初のオンライン双方向TV「みらクルTV」開局 2020年4月
2020年3月中旬、私たちは「Zoom」というテレビ会議を初めて体験し、そのパフォーマンスに驚きました。
「三密」を回避しつつ、対面で親密なコミュニケーションが取れる。
私たちは、Zoomを活用したオンライン双方向テレビ放送局を開局することにしました。
Zoomテレビ会議、WEBサイト、YouTube放送を組み合わせたメディアです。
既存の技術だから、こういうことができることは誰でも想像できます。
しかし、多彩な放送コンテンツをつくることは容易ではありません。
大きな組織も資力もない私たちにこれができたのは、ほかならぬ「囲碁のまち大船渡」で培われた広範な分野の方々が進んでご助力くださったからです。
囲碁、音楽、復興、防災、障がい者福祉、まちづくり・・・。
日本初(世界でも多分初)のテレビ局の名前は「みらクルTV」。
原香織さん(番組編成部長)の命名で、未来、希望、連携を表わしています。
出演者もスタッフもすべてがボランティアで、それぞれが献身的な努力を行っってくれました。
技術を担った三上俊治氏(東洋大学名誉教授)は、開局直前に過労で倒れられてしまった。
4月11日、主なレギュラー出演者とスタッフにより、開局特番が放送されました。
多彩なレギュラー番組と並行して、6月には「北九州市Zoom囲碁まつり」、9月に「第八回首都防災ウィーク」、10月からの「碁石・心の交流」事業、10月「第10回21世紀の朝鮮通信使(鞆の浦)」、2021年3月「中央区女性センターまつり」などが、みらクルTV特番として放送されました。
既配信番組は次に公開しています。
https://www.youtube.com/channel/UCz1Ol2QWmGWcjyR-gJREW2w/vid
3 「第七回碁石海岸で囲碁まつり」(2020年9月開催予定)を断念 2020年6月
私たちは、2014年から「碁石海岸で囲碁まつり」という復興イベントを開催してきました。
2012年秋に、碁石地区復興まちづくり協議会から依頼があり、ネーミングの面白さから、心の唄バンドや東京いのちのポータルサイト(首都圏を中心とする日本最大の民間防災団体)が主となり、実施しました。
当初はイベント開催を目的としたが、大船渡出身の石鍋博子氏(ワンピース倶楽部主宰)の強い熱意で「囲碁のまち大船渡」というまちづくりに目標が変わりました。
ご助力をいただいた戸田公明市長からも「一過性のイベントには絶対にしないでほしい」との要望があり、<持続的な復興と振興>を追求しています。
2014年 第一回囲碁まつり、首都圏から80人が参加。
復活したばかりの三陸鉄道を日本初の囲碁列車が走りました。
2015年 第二回囲碁まつり、10,926筆の「囲碁のまち大船渡請願署名」が市議会で採択
2016年 第三回囲碁まつり、日台交流囲碁大会、「碁石の日」(5月14日)制定(大船渡市)、「囲碁神社」設立
2017年 第四回囲碁まつり、全国台湾盲学校囲碁大会併催(柿島光晴実行委員長)
NHK「お晩です岩手」「おはよう日本」「NHKワールド」などで全国、世界に報道されました。
2018年 三大タイトル戦の棋聖戦開催、第五回囲碁まつり、全国台湾韓国盲学校囲碁大会併催(柿島光晴実行委員長)
2019年 第六回囲碁まつり、本因坊戦第一局併催
そして2020年9月、名人戦と東京オリンピック・パラリンピック記念「第七回碁石海岸で囲碁まつり~世界碁縁芸術文化祭~」を開催する準備を、私たちは整えました。
そして、この事業もまた、コロナで幻となりました。
「みやこ秋まつり」2020.9
岐阜県立岐阜盲学校では、2021年4月から専攻科の「視覚障害リハビリテーション」として囲碁授業が始まりました。
4 「碁石・心の交流事業」 2020年10月
多くの方々の参加とご助力により、短期間に大きな事業展開がなされました。
復興イベントとしては成功したと言えるでしょう。
しかし、私たちの目的はイベントではなく、持続的な復興と振興です。
この視点から見れば、まったく不十分です。
地元の担い手、特に若い世代の担い手は少なく、日常・通年の賑わいは難しく、「過疎化、高齢化」は依然として大変大きな困難でした。
このままでは「一過性のイベント」に終わってしまう。
岩手県の特別支援学校の皆さまや、宮古の方々と話し合い、満を持して計画した「第七回碁石海岸で囲碁まつり~世界碁縁芸術文化祭」(東京オリパラ記念)がコロナで中止となりました。
私たちはまたもや大きな打撃を受けました。
こんな中、私たちは、地元の碁石地区復興まちづくり協議会と一緒に「碁石・心の交流事業(碁石心の交流~音楽神社祭・囲碁祭~生きがいづくりと持続的振興)」に取り組むことにしました。
年間を通じた取組みになること、被災者の方々と親しく交流できるまたとない機会であることから、大きな期待を持ちました。
5 素晴らしいミュージシャンとの出会い
私たちの活動には、「碁縁」と共に、いつも音楽がありました。
音楽は、書道、茶道、絵画など他の文化・文芸と異なり、人間のからだを直接振動させる不思議なメディアです。
鼓膜が震えれば音になり、同時に身体の隅々までが共振し、共鳴しています。
今回もまた、素晴らしミュージシャンとの出会いがありました。
◆LOVE SONGERS
3月に開催を予定していた「音楽神社祭」の演奏団体の一つです。
「気仙沼市内でピアノを教えている先生3名とギタリスト1名のユニットLOVE SONGERS(ラブソンガーズ)。自身も音楽のチカラに救われ前を向く事が出来た経験を活かし「聞く人全てを少しでも勇気付ける事が出来るように」を信念に活動中。1stオリジナルミニアルバム『らぶそん』を6/29にリリース!」
ご自身も被災し、楽器を全て流されたとのことでしたが、毎回、大変楽しく、しかも心に沁みる演奏をしてくれました。
幸運なことに、ギタリストの小野寺忍氏は、気仙沼で音響技術会社を経営しておられました。
第一回の現地開催では、PA(音響装置)の設営を仕切ってくださり、12月の第三回からは、高校生向けの音響技術者養成講座をお願いすることができました。
1月に地元高校生が受講し、今後の展開に希望が生まれました。
LOVE SONGERSは、私たちの願いである<地域主体・通年・若い世代が担う持続的な振興>の大切な要素になっていただけると思います。
映像配信技術講座は、「21世紀の朝鮮通信使」事業でお世話になった、徳永明彦氏(福山市在住、ネットアイランド主宰)にお願いしました。全国の地域連携が生きました。
◆大石亜矢子(シンガーソングライター、ピアノ弾き語り、全盲)
静岡県沼津市出身 武蔵野音楽大学声楽科卒業。ソロによる歌唱の他、ピアノの弾き語りによる演奏活動を行う。またアイメイトのイリーナと盲導犬の啓発活動も行っている。夫であり、全盲弁護士の大胡田誠と共に「全盲夫婦によるトークアンドコンサート」を各地で開催している。ティートックレコーズよりCD「My Life」リリース。岩崎書店より「今日からはあなたの盲導犬」(写真絵本)にモデルとして紹介されている。「○○の妻たち」でテレビ出演。中央公論新社より夫婦でのエッセイ「決断、全盲の二人が家族を作る時」を出版。2008 東京国際フォーラムにてNPO法人日本バリアフリー協会主催「第5回ゴールドコンサート」にてグランプリ受賞 2009 同第6回ゴールドコンサートにてゲスト出演 SPEEDの今井絵理子さんと競演 2018 音楽生活20周年記念ベスト盤「My Best」をティートックレコーズよりリリース。
大石さんは、2020年9月に予定していた「第七回碁石海岸で囲碁まつり~世界碁縁芸術文化祭」の招待歌手です。
ソプラノ歌手、ピアノ弾き語り、作曲、そして作詞が格別にすばらしい。
更に、その場でインタビューした相手の人生に沿って、即興で作詞、作曲し、見事に弾き語る。
信じがたい、驚異の能力であり、彼女のような音楽家はおそらく世界に例がないと思います。
◆白井崇陽(ヴァイオリニスト、全盲)
白井さんもまた、「世界碁縁芸術文化祭」の予定ミュージシャン、魂のヴァイオリニストです。
新型コロナでご自身の演奏活動が難しくなったため、本事業にご協力いただくことができました。
情感豊かに心を包み込む暖かい音色は、歌そのもの。ニューアルバムでは、文字通りボーカル楽曲の歌唱にも挑戦。全国各地での演奏の他、学校での講演(トーク&ライブ)・舞台音楽への参加・アニメやゲーム音楽のレコーディング・ラジオパーソナリティ・囲碁など、幅広く活動中。
1984年 愛知県田原市生まれ。
1995年,1997年 全日本盲学生音楽コンクール(現・ヘレンケラー記念音楽コンクール)にて、連続1位。
筑波大学付属盲学校音楽科を経て2006年 桐朋学園大学音楽学部バイオリン科卒業。
小川有紀子、鷲見健彰、和波孝禧、各氏に師事。
2007年 NHK 「つながるテレビ@ヒューマン」、フジテレビ 「スーパーニュース」で特集される。
2007年 陸上アスリートとして、ブラジル開催IBSA世界選手権にて3段跳びで5位、走り幅跳びで8位入賞。
2007年1月 映画「あなたを忘れない」の挿入歌に参加し、サウンドトラックCDレコーディング、日本武道館でのプレミアムコンサートに参加。
2007年12月 この年より3年連続で、神戸ルミナリエのCDレコーディングに参加、ハートフルデーに出演。
2008年10月 アルバム「大いなる刻」の全国発売にて、CDデビュー。
2012年7月 音楽家人名事典 『日本の演奏家-クラシック音楽の1400人』に掲載される。
2018年 視覚障碍者囲碁大会にて、9路盤の部優勝・13路盤の部準優勝
2018年 部隊 「MANKAI STAGE『A3!」の音楽製作・レコーディングに参加。
2018年12月 NHK 「視覚障碍者ナビラジオ」に出演。
2019年8月 ニューアルバム「空と大地のノスタルジア」を発売。
2020年4月 みらクルTV開局と共に、レギュラー番組「僕らのパーソナルヒストリー」を担当。
◆心の唄バンド
木谷がリーダーなので「出会い」とは言えません。
2008年に原型ができて、2009年にほぼ現在の構成になりました。
バックバンドの技量は高く、竹DS(Deaf Singer)の創作ソロ手話唄が美しい。
2011年5月、このバンドが、宮城県南三陸町歌津中学校体育館の避難所で心のケア活動を行いました。
私たちと東北被災地との初めての関りです。
この訪問がなければ、2014年からの「碁石海岸で囲碁まつり」も存在しませんでした。
南三陸と碁石地区は意外に近いのです。
不思議なご縁です。
大震災半年後の9月に東京で開催した「心の唄’11」(新宿文化センター大ホール)のオープニングとエンディング映像を掲載させていただきます。お時間があればご視聴ください。
6 「碁石・心の交流事業」の困難、その先に見えた希望
最大の困難は、またしてもコロナでした。
先行きの見通しが立たず、地域の人々には集まることへの不安がありました。
11月の第二回からは、現地開催が不可能となってしまいました。
日本中が同じ困難に直面し、社会(=人の集まり)が持つ力が抑え込まれました。
今も同じであり、ほかにも、首都直下地震や巨大水害、過疎と高齢化、障がい者と家族の苦悩など山のような困難があります。
私たちはこれらをどう克服していくのでしょうか?
第二の困難は、地域の人々にインターネットの習慣が少なかったことです。
特に、Zoomテレビ会議を体験した方はほとんどいなかったと思われます。
日本中が同じ状況でした。
会場の碁石地区コミュニティセンターには、動画を送る光回線がありませんでした。
私たちは、光回線が引けるかどうかをNTTに確認し、施設管理者に配備許可をいただくことから始めました。
しかしこの結果、コロナが再び猛威を奮いだした11月以降にも、私たちは全面オンラインで事業を継続することができ、2021年度の事業にもつながる力を得ました。
2020年10月から2021年3月までの半年間、6回の「碁石・心の交流事業」を開催し、私たちは希望へと向かうたくさんの手掛かりを得ました。
コロナがあろうと何があろうと、人と人、心と心がつながりあえるということに私たちは希望を見出すことができます。
7 六回の交流事業の内容
第一回:2020年10月17日 三密を避け、現地とZoomで初開催
第二回:2020年11月22日
コロナ第二波により、直前に現地開催を断念しオンライン開催。音響技術者養成講座も中止した。
201108チラシ(裏)
第三回:2020年12月13日 高校生向けに、音響と映像配信技術者養成講座をオンラインで始めた。
第四回:2021年1月31日 今回も全面オンラインで開催。地元の高校生二人が初めて技術者養成講座に参加した。
210111チラシ210114碁石(裏)
第五回:2021年2月13日 今回も全面オンラインで開催
210201第5回チラシ(表)210201第五回チラシ(裏).docx
第六回:2021年3月20日 音楽神社祭を断念し、全面オンラインで第六回を開催
210305第六回チラシ(裏)差し替え
東海新報の嬉しい記事です。
210323東海新報8 囲碁神社の設立 2016年
碁石地区にある熊野神社(中森熊野神社)は600年以上の歴史を持つ由緒ある神社です。
2016年、多くの方々のお力により「石の碁盤」を奉納させていただき、通称を「囲碁神社」とさせていただくことになりました。「囲碁の聖地だったら囲碁神社が必要だ」という石鍋博子氏の思いが実ったものです。
当日は、林海峰名誉天元をお招きし、市長、議長、商議所会頭、日本棋院大船渡支部長などご参列のもと、盛大な「石の碁盤奉納祭」が開催されました。
揮毫は林海峰先生がお引き受けくださった。
大船渡市は「碁石の日(5月14日)」を制定し、「囲碁のまち大船渡」は開始後二年間で一つの節目を迎えました。
2018年2月に棋聖戦第四局(井山棋聖対一力九段)、2019年5月に本因坊戦第一局(本因坊文裕対河野九段)が大船渡で行われ、全国報道されました。
三大タイトル戦の招致は「夢のまた夢」でしたから、連続開催は想像を超えた出来事でした。
「囲碁のまち大船渡」が知られるようになりました。
私たちは2017年8月から、大船渡市の学童クラブで囲碁を教えるようになりました。
碁を覚えた子どもたちが、デイセンターのお年寄りの「ちびっこ先生」になり、大喝采を浴びました。
囲碁神社設立は素晴らしい事業でしたが、残念ながら、大きな囲碁イベントのときしか賑わいは生まれませんでした。囲碁ファン以外の方々も含めて、年間を通じて賑わいをつくりだす方策はないものだろうか?
ここで、「音楽神社構想」が登場しました。
9 音楽神社
神秘なたたずまいの熊野神社は美しい海を見下ろす高台にあります。
「一度でいいから、こんな場所でライブをやりたい」というのが、全国ミュージシャンの夢です。
ところが、音響装置、ステージ、いすなどを借りれば多額な経費と労力がかかります。
都市近郊では騒音苦情も出てきます。
そこで、音響、電子ピアノ、ステージ、イス、夜間照明、映像発信装置などを備えた、全国初の「音楽神社」になっていただく構想が生まれました。
ミュージシャンはギターやベースなど、自分の楽器を持ってくるだけで良い。
仙台、盛岡はジャズのまちとして有名で、大船渡にもSand Pipers Orchestraという優れたビッグバンドがあります。陸前高田や気仙沼にもローカルバンドはたくさんあります。
近隣に住民はおられるものの、地域は広大であり、賑わいへの希求が強いので、苦情は出ないと地元の方々は言われます。
将来、会場と資機材を有料で貸し出すことにより、地域の運営資金を得ることができるかもしれない。
地域に密着しながら、楽しくまちづくりを行う若者たちが出てくるかもしれない。
大船渡でもあまり知られていませんが、熊野神社の起源は音楽です。
「松島からやってきて沖に停泊した舟から妙なる音楽が聞こえてきた。老女が聴き入っていたら、煮ていた麻が腐ってしまった(麻腐島伝説)」。
長い時間をかけ、様々な方々の努力とご助力で音楽神社の資機材が整備されてきました。
決め手はこの施設を運営する方々がおられるかどうか?
音響や映像配信装置を駆使して、自分たち自身が音楽を楽しみながら音楽神社を運営し、全国・世界に情報発信する若者たち。
今回の「碁石・心の交流事業」で行われた技術者養成講座に、地元の高校生二人が参加しました。
自分たちもバンドをやっているとのことでした。
PA(音響技術)をマスターすれば、バンドの音が見違えるようになります。
私たちは「関東大震災100年」の2023年をもって大型イベントに一区切りをつける予定です。
あと二年で、地元が主体となる持続的振興を軌道に乗せたいと思います。
囲碁神社・音楽神社が地域の核として、活き活きと運営される日が来ることを待ち望んでいます。
10 ヘキゴ 屋外囲碁美術館~広大な防潮堤がキャンパス
被災地の市街地からは海が見えません。延々と続く防潮堤は「進撃の巨人」みたいです。
この防潮堤を屋外美術館にする構想が生まれました。
発案はまたしても石鍋博子さんでした。
ガウディの未完建築サグラダファミリアのように、毎年少しずつ横に伸びる。
観光客が大船渡に入った瞬間に、「囲碁のまち大船渡」が見える!
小学生の絵がヘキゴになれば、将来、大船渡を離れても、家族連れで絵を見に帰ってきてくれると思います。
次の写真は実在するのではなく、臂徹氏((株)キャッセン大船渡取締役)がお書き下さったイラストです。
11 「鎮魂と希望の竹明かり」 大船渡と東京が「竹」でつながる 2021年8月
2013年9月、関東大震災90周年の節目に、東京都横網町公園/東京都慰霊堂で第一回首都防災ウィーク(中林一樹実行委員長)が開催されました。横網町公園(墨田区)は、大震災で3万8千人が焼死した旧陸軍被服廠跡、防災の聖地ですが、あまり世に知られていません。両国の国技館が近いので「横綱町」と間違える人もいます(実は私も間違えました)。
第一回防災ウィーク最大のイベントは、(公財)日本棋院のご後援をいただいて開催した「634(ムサシ)面打ち囲碁大会」でした。
境内を埋め尽くした碁盤の脇に、鎮魂の灯がセットされました。
全て、現地事務局長・ 岡本博氏(墨田区耐震補強推進協議会事務局)の発案と采配によるものです。
写真は 開会前の岡本博氏、和田紀夫・日本棋院理事長、木谷。
開会の頃から雨が降り始め、和田理事長、山崎昇墨田区長のご挨拶が終わり、鎮魂の灯が灯る頃には大雨になりました。
大混乱の中、囲碁大会は中止し、スタッフはずぶぬれになりながら機材を撤収し、夜遅くまで対局時計や碁盤の保全を行いました。
岡本氏はウィーク終了後にクモ膜下出血を起こし、生命は取り留めたものの、重い高次脳機能障がいを負われました。痛恨の出来事でした。
今年8月28日(土)~9月5日(日)、横網町公園で第九回首都防災ウィークを開催します。
首都防災ウィーク実行委員会と碁石地区復興まちづくり協議会は、碁石地区の放置竹林を伐採した竹50本を使って、横網町公園の近くの高校生に夏休みのワークショップとして竹明かりを制作していただく構想を持っています。
制作の指導は、熊本県在住の池田親生氏(著名な竹明かりクリエーター「ちかけん」共同代表)にお願いする予定です。
2017年の第五回首都防災ウィークで、戸田公明大船渡市長に特別講演をお願いしました。
あわせて、首都圏さんりく大船渡人会様のご協力を得て、大船渡のサンマ1000尾の炭火焼を行い、参加者に提供しました。大船渡のサンマ炭火焼きは首都防災ウィークの屋外目玉行事となりました。
地元高校との協議が整えば、8月28日(土)の夜の開会式で、鎮魂と希望の竹明かりが点灯します。
9日間、竹明かりは慰霊堂を照らし、首都防災ウィーク終了後に大船渡に戻り、9月18日「第七回碁石海岸で囲碁まつり~世界碁縁芸術文化祭」で開催される「音楽神社祭」の照明になる予定です。
この1年半、私たちは新型コロナに翻弄されました。
しかし、脅威はコロナだけではありません。
過疎化・高齢化の流れの中で、大船渡はじめ被災地の持続的復興と振興を実現するのは簡単ではないです。
東京にもまた、首都直下地震というすさまじい出来事が迫っています。
国際関係も含め、日本全体が戦後最大の危機に直面していることは間違いないと思います。
私たちは現状を直視し、自分たちの力で危機を打開したいと願っています。
東京では囲碁界と各界が連携し、「心をつなぐ囲碁~コロナに負けない!」というプロジェクトが始まりました。
第一弾として、5月31日(月)~6月6日(日)に、市ヶ谷の日本棋院で「イベント『脳、その魅力と謎』」が開催されます。
(公財)日本棋院、千代田区、同教育委員会などに続き、
厚生労働省、NHK、共同通信社、時事通信社からご後援をいただきました。
とても嬉しく、ありがたいです。
記念講演をお願いした脳科学者の茂木健一郎氏から素敵なメッセージが届きました。
「人工知能時代、人間の脳にとっての囲碁の効用」
仲邑菫二段(中一)と岩崎晴都院生(盲学校・中一)の夢の対局(6月4日(金))も実現しました。
詳細は、http://miracletv.site/ みらクルTV公式サイトに掲載されています。
210514チラシ(表)
「人をつなぎ、心をつなぐ囲碁」は様々な分野、地域を結ぶ新たなプラットフォームになると感じています。
7年前(2014年)、大船渡の復興支援イベントとして始まった「囲碁のまち大船渡」は、楽しく和やかな流れとして首都圏、全国に波及しました。
今、首都圏、全国と大船渡はじめ被災地がつながりあい、未曽有の困難に向かいあいます。
現状を直視しつつも、楽観的に、未来に希望を持って、ご一緒に次の一手を打ちたいと思います。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
最後になりますが、ご助力くださった大船渡市をはじめ現地のたくさんの方々、首都圏、全国の皆さまに、心から感謝し、厚く御礼申し上げます。
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【付録】
本年3月の東日本大震災10周年に、ラジオ日本のインタビューを受けました。
子どもの頃、都庁時代、なぜ大船渡に関りができたのかなどについてお話ししています。
お時間があれば、お聴きください。
◆小鳩の愛 あの日を忘れない~わたしの3.11①「囲碁と大船渡」(2021年3月6日放送)media.jorf.co.jp/kobato/kobato_podcast_210306.mp3 24分
◆小鳩の愛 あの日を忘れない~わたしの3.11②「囲碁と大船渡」(2021年3月13日放送)
media.jorf.co.jp/kobato/kobato_podcast_210313.mp3 24分
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